冒頭部分: 本稿の目的は、かような米国による日本への軍拡要請の合理性をめぐり、批判的考察の必要性を指摘することである。そのために、まず米国の対中政策とオフショア・バランシングの関係について整理を行う。続いて、米国の対中戦略に顕著な影響を与えたとされる アリソン「トゥキュディデスの罠」論と、これを批判する先行研究を参照しつつ、「恐怖」という感情と国家間紛争開戦の関係をめぐり、トゥキュディデスによる示唆の実相がアリソン「トゥキュディデスの罠」論と乖離するものであることを指摘し、考察を進めていくという方法をとることとしたい。