冒頭部分: 今日、社会とAIの関わりをめぐって強い危機感をもって語られている主題の一つは、AIの安全性であろう。「安全性」という言葉の意味が及ぶ範囲は広く、悪用や制御の喪失への備えから、有害な出力や偏りの抑制、プライバシーやセキュリティの確保までを含む。その一方で、知らないことをLLM(大規模言語モデル)に尋ね、返ってきた回答を信じるという営みは、検索や人への質問と並ぶ、何かを知るための日常の手段になりつつある。本稿が論じるのは、AIの安全性のうちの一側面、すなわち、人がAIの回答を信じ、それが偽であったときに、ほかの誰よりもまず利用者に生じる不利益の可能性である。