冒頭部分: 小林直樹はかつてこう述べた。「学界の圧倒的といってよい通説によれば、憲法9条は明らかに戦争の放棄と軍備の禁止を定めたもので、自衛隊のような存在は許されないと解するほかない」 。しかし、2000年代に入り、自衛隊を違憲としない政府解釈を受容する憲法研究者は多く存在するとされる 。樋口陽一は、憲法9条論をめぐり、「戦前日本のマイナス体験」をめぐる日本特有の歴史事情を重視すべきこと、過去の日本の歴史の暗部に目をやることの重要性を指摘した 。大学院に入学以降憲法9条研究に従事してきた筆者は、一貫して樋口によるこの指摘を指標とし、立憲主義の形成・維持において、歴史的経験を基盤とした「日本的特殊性」への依拠という手続にこだわってきた 。